ライブ後に倒れた綾は目を覚まし、唯から事の一部始終を聞かされる。生徒会から注意を受けたことで心が折れるかと思いきや、綾は至って前向きだった。そんな彼女の姿に、唯や麻央、そしてこころまでもが感化される。
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講堂でのライブを終え、綾の体調も回復した頃。綾たちとこころを含めた四人は、いつものファミレスでテーブルを囲んでいた。
「これから、どうするんですか…?」
いかにも不安そうな口調でそう切り出したのは、麻央だった。聞いた後の空気が気まずかったのか、すぐに目を伏せる彼女を見ながら、綾が口を開く。
「もちろん、生徒会にちゃんと話を通すよ」
「できるの?」
「そんなの…」
こころからの厳しい問いに、綾は一瞬だけ口をつぐんだ。しかし、すぐにこころへ力強い眼差しを向けながら答える。
「できる、できないじゃなくて、やるの」
それを聞いて、こころは感心と諦めが入り混じったような表情を浮かべた。
「まったく、仕方ないんだから」
そう呟いてから、こころは綾に微笑みかける。しかし、綾にはそこにどういう意図があったのか分からなかった。
「ねえ、綾」
「…どうしたの?」
「ありがとね」
「え? なにが?」
「この間のライブで歌ってた曲、綾が考えた歌詞でしょ」
「うん。こころちゃんには、早く書けって怒られちゃったけど」
そう言いながら、綾はバツが悪そうに笑う。
「でも、気づいてくれたんだね」
「うん。綾たち三人と、私の名前が入ってた」
「やっぱり、こころちゃんが居てこそのグループかなって思うから」
「ありがとう。それでね——」
「だからさ、こころちゃん!」
こころの言葉を遮って、綾が身を乗り出した。
「やっぱり、私たちと一緒にドールズにならない?」
「…うん! よろしくね!」
綾の勧誘にこころが即答し、フラワーズ・ヒル高校スクールアイドル部は、四人目のメンバーを迎え入れることとなった。
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