唯の勧誘に成功し、更にはその親友である浅野 麻央の加入も決まり、三人となった “フラワーズ・ヒル高校アイドル部” が、ついに動き出す。
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「ねえ、ちょっと聞きたいんだけどさ」
放課後。綾、唯、麻央の三人は学校の近くにあるファミレスに集まっていた。
「これから、何する?」
「…え? 考えてないんですか?」
「そんなことないよ! ライブとかできたらいいなって思ってる!」
「ライブ、ですか」
「うん! まずは学校の講堂とか使ってライブしたいなーって!」
綾は目を輝かせながらそう言った。唯と麻央も、満更でもなさそうな様子である。
そんな二人の様子を見て、綾はライブの開催を決意する。
「よーし。そうと決まれば、作戦会議だね!」
「作戦…?」
「うん。どんなライブにするか、どうやってお客さんを集めるか。せっかくなら、成功させたいじゃん?」
「まあ、たしかに」
唯の返事を聞きながら、綾は自分のスケジュール帳を開く。
メンバーが集まったからといって、すぐにライブができるわけではない。アイドルである以上、歌やダンスの練習は必須になる。
「1か月」
唐突にそう言った綾に、唯と麻央は驚きと不安の色を含んだ視線を投げる。1か月…?
「1か月で、何とかしよう。歌も、ダンスも」
「それは、さすがにちょっと…」
「私も、すごく無理なお願いだってことは分かってるの。でも、頑張ってみてほしい」
綾は二人の視線を打ち消すように、力強い眼差しを向ける。
「…分かりました」
それまで、じっと黙っていた麻央が、不意にそう答えた。
「私、頑張ってみます」
「…私も。頑張ります!」
唯は麻央の強い意志に半ば驚きつつも、それに同意する。
二人の返事を受け、綾の表情が一気に明るくなった。
「うん、じゃあ決まり! 一緒に頑張ろうね!」
綾のその前向きな姿勢に、唯と麻央の緊張も少しずつ和らいでいった。
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