衣装担当・麻央、作曲担当・唯、作詞担当・綾。それぞれの役割が決まったものの、肝心のダンスは三人とも未経験。そこで綾は、こころにダンスを教えてもらうよう交渉する。その交渉はなんとか成立したものの、こころからまずは基礎体力づくりをするようにと指導を受ける。
▷
「はぁ…はぁ…」
「こころちゃん、私もう限界……」
こころの考案したトレーニングは厳しく、中でも毎日の坂道ダッシュは綾たちの体力を一気に消耗させた。
「はい、ラスト1往復!」
「鬼…」
「鬼だ…」
「スパルタ…」
こころの特訓は厳しかったが、そのぶん綾たちは確実に体力をつけてきていた。
「あー、疲れた!」
「もう無理…」
「じゃ、今日はこの辺で終わりにしよっか」
ラスト1往復を終え、こころはそう言った。それから、登ってきた坂道を下り始める。その後を、綾たち三人も慌てて追う。
「あの、ちょっといいですか」
歩きながら、唯が不意に誰にともなく話し掛ける。
「ちょっと、話があって」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
帰り道、四人は近くのファミレスに寄った。以前、こころ以外の三人で “作戦会議” をした店である。
「えっと…話って?」
席に着いてしばらくした頃、綾が不安げにそう切り出した。すると唯は、それまで俯いていた顔をほんの少し上げる。
「実は」
そう言いながら、唯は制服のポケットから携帯電話を取り出し、テーブルの上に置いた。
「……?」
「ついにできたんです、私たちのメロディが…!」
0コメント