唯による作曲がついに完了し、綾たちはいよいよ本格的なダンスの練習を開始することに。そんな彼女たちを見ながら、こころは自分も仲間に加わりたいという思いを募らせるも、それを打ち明けられずにいた。
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こころ監督によるダンス練習、そして綾の個人レッスンの成果は、すぐに出てきた。しかし時の流れは速く、本格的な練習が始まって2週間が経とうとしていた。そんなある日のこと。
「ねえ、綾!」
珍しく、こころが綾に怒声を放っていた。
「いつになったら歌詞が書けるの?」
「それは…」
「本番まで、あと1週間なんだよ?!」
「分かってるよ」
「呆れた…。私、もう知らないから」
そう言って、こころは屋上を後にした。その場に残された綾と麻央、唯の三人の間に張り詰めた空気が漂う。
しかし、こころが怒るのも無理はなかった。そのため、麻央も唯も、綾に声を掛けることができずにいた。
「あのさ」
呟くように、綾が言う。
「今日、これから時間ある?」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ダンスの練習を終え、三人はいつものファミレスに集まっていた。
「ごめんね、私のせいで」
「いえ…」
麻央も唯も、綾に何と返せばいいのか分からなかった。
「実はさ」
「?」
「できてるんだ、歌詞」
「え…?」
綾の言葉に、麻央と唯はお互いの顔を見合わせた。「歌詞ができてる」…?
二人の戸惑いを他所に、綾は鞄の中から一枚の紙を取り出した。麻央と唯は、思わずそれを覗き込む。
「どう、かな?」
しばらくの沈黙の後、綾が恐る恐るそう尋ねた。
「これ……」
「めちゃくちゃいいですよ! これ!」
麻央と唯はそう声を上げる。二人の強い眼差しに、綾の表情は和らいだ。
「綾さん」
「…なに?」
「この曲、私たち三人で完成させましょう!」
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